sonicstepsのブログ

トットちゃんが妬ましい。エジソンを目指すとかあり得ない。 一部の成功者らの美談はさておき、多くの当事者にとって、発達障害はやっぱりつらい。 おまけに憎い。何よりそいつはかけがえのない人生を奪った元凶なのだ。 だけど……それでも僕らは生きてゆく、終わることのない絶望の毎日を。

僕は50過をぎても発達障害をやってる冴えない中年男です。エジソンやジョブスがどうかは知りませんが、僕自身にはさしたる個性も才能もなく、人生の敗残者として悶々とした日々を送っています。このブログで取り上げる発達障害者とは、一部メディアが持ち上げるような「障害を素晴らしい個性へと開花させた成功者」のことではありません。僕と同じく底辺を這いずる圧倒的多数の当事者たちに捧げるものです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

ADHDとして生きるということ⑫ 正式配属

醜態を晒した研修の日々がやっと終わった。確かめた訳ではないが、評価はたぶん同期で最下位だったのではないか。僕は試用期間で会社から追い出されることを恐れたが、さすがにそれは杞憂に終わり、本社営業部への正式配属を告げられた。 直属上司の付き添い…

ADHDとして生きるということ⑪ 新人研修

バブルの真っ盛りだった80年代後半の4月、大手企業に就職した僕は、社会人としての第一歩を踏み出した。 入社時に着ていた背広はオーダーメイドの三つ揃えだった。服に無頓着な僕を心配した親が、お金を振り込んでくれた上に、「そんなにすごい会社に入るん…

ADHDとして生きるということ⑩ 大学、そして就職

大学への進学が決まった僕は、親元を離れてひとり暮らしをすることになった。 念願の東京暮らしと言いたいところだが、大学があるのは都と隣接する某県の某市だった。まあ、電車のふた駅先は東京都という立地ではあるから、感覚的にはほとんど「上京」と変わ…

ADHDとして生きるということ⑨ 大学受験

高校を卒業したら、東京の美術大学へ進みたい—— 日曜日の午後、僕は自分の意向を思い切って両親へ伝えた。 たちまち全身に緊張が走った。言うが早いか、即座に猛反対されると思ったのだ。それでも僕の決意は硬い。口論になったら徹底的に受けて立つ覚悟を決…

ADHDとして生きるということ⑧ 高校(後編)

高校2年生ともなると、誰もが将来の進路で悩むようになる。僕もそろそろ受験を考えなければならなくなったが、「東京へ行きたい」という漠然とした思いしか浮かんでこない。将来に備えて何かを身につけようとか、じっくり専攻科目に取り組みたいとか、そんな…

ADHDとして生きるということ⑦ 高校(中編)

前後して申し訳ないが、時計の針を高校入学の頃に戻させていただく。 中学時代の地道な筋トレが功を奏し、僅かながらも運動能力の向上に成功した僕は、高校へ上がると弓道部へ入部した。もちろん、これまでのスポーツに対するコンプレックスを払拭するためだ…

ADHDとして生きるということ⑥・高校(前編)

——高校へ行ったら、自分はきっと生まれ変わってみせる—— 中三までの惨めな日々との決別を誓って、僕は共学の県立高校へ進学した。ここで人生を変えられなかったら、きっと死ぬまで後悔することになる……何とも青臭い思い込みだが、当時は真剣だった。 同級生…

ADHDとして生きるということ⑤・中学(後編)

中学に上がると、僕にもそれなりに友だちができるようになった。漫画やプラモデルに出会ったことで、何かに打ち込む喜びも覚えた。だが、クラスの女子との軋轢はますます悪化の一途を辿り、何をやっても嫌われ続けることになる。 初めて異変に気づいたのは、…

ADHDとして生きるということ④・中学(前編) 

小学校の高学年になると、僕は県立大学付属中学校の受験を目指して猛勉強を強いられた。平日はもとより、日曜祭日も母親が付き添い、朝から晩まで机に縛りつけられるのだ。子どもらしい娯楽は取り上げられた。楽しいはずのゴールデンウィークや夏休みも犠牲…

ADHDとして生きるということ③・思春期

あまたの例外はあるものの、発達障害のある人たちの中には、極端に異性にモテないケースがあるように思う。 理由はいくつも考えられる。まず、発達障害の多くはいわゆるオタクだ。趣味はたいていマニアックだから、話題を共有できる相手は限られている。だか…

ADHDとして生きるということ②・両親との関係

両親のことを書く前に、小学生の頃の成績にも触れておく。 ADHDの大きな特性として、好きなことには尋常ならざる集中力を発揮するが、嫌いなことには見向きもしないというのがある。こと勉強に関しては、これは僕にも当てははまることだった。 といって…

ADHDとして生きるということ①・学童期

まず、ここで自分のことを詳しく書いておこう。 僕は現在55歳、独身のひとり暮らし。30年務めた会社を訳あって辞め、いまは福祉職員として働いている。夜勤を伴う仕事のおかげで体調は悪い。特に突発的な目眩は厄介で、ときには何時間も動けなくなったりす…

イントロダクション

いまから87年前のこと。 東京・乃木坂の裕福な家庭に、ひとりの女の子が生まれた。 彼女は幼少の頃から変わっていた。入学先の小学校では教室でおとなしくしていることができず、毎日のように迷惑行為を繰り返した。机のふたをやかましく開閉したり、窓辺…